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「ねぇ、何か食べる?」「ぶっちぎりパン」「えー? 何それー!」「俺にふさわしいネーミングさ」と笑った車窓の先にはちぎったパンのようないくつもの雲がひしめくでもその一つ一つを数えられるこんなノンビリ旅もたまにはいいもんだな追っ手をぶっちぎって先端を突っ走るのは爽快だけどやがて疲れてしまうし早い奴には好きに抜かせて自分はマイペースで行くのもアリ結局ゴールは同じさ……なんてことが思えるのは少しは心に余裕ができたんだろうかそんな思いと共にバスは雲を横目に進むパンをつまみ合いながら同じに揺れる二人を乗せて
一緒によく来ていた昼下がりの喫茶店通りのカップルを眺めながら自分たちの方がラブラブかなあの二人には負けるかななどと思っていたものさひとり笑う僕に「どうしたの?」と尋ねた君が懐かしい時は流れ思い出が消えるようにあの店も無くなったけどここに立つと自然と耳によみがえる心地良かったピアノジャズそしてもっと優しかった君の声
久々のドシャ降りだったけどようやく止んでくれたな薄雲の向こう側であちこちの傷痕を見ながら太陽は苦渋の表情だけど明日にはもっといつもの日常に戻っているかな戻ってるといいけどな君の笑顔が見たいし君に笑顔を見せたいし……
YEWJI